夜陰

 

 

 

あれから

どれぐらいの時間が経っただろうか。

 

全くの無意識で、

 

シャワーの設定温度を

いつもと比べて、はるかに高く設定した わたしは、

狭いお風呂場の壁に 背をもたれた。

 

強めの水圧と 60度に設定されたシャワーは、

わたしの身体に 幾度となく矢を放つ。

 

そして

目線の先にある すっかり結露した 扉は、

少しずつ 目に涙を浮かべて

それを ゆっくりと頬につたわせていった ...

 

 

しかし、

その 頬につたわっていった涙を

わたしは 最後まで見届けることができなかった。

 

鼻が ツーンとするような感覚に襲われ、

じわじわと 視界に濃霧がかかる。

 

そして

その事実に気づかせまいと、

熱いシャワーが わたしの頬をとらえた。

 

なんだか、生きているというより

死んでいるような気がした。

 

 

こういう記憶の断片が、

果たしてほんとうに

自らの身に、心に、起こったことだったのか

 

それとも

昔見た、一夜の夢の映像を、

わたし自身が 脳裏に蘇らせただけだったのか

 

このblogを書いている 今となっては、

そこまで重要ではないような 気もする。

 

 

なにより、

救いがたい 絶望の淵に沈むことを 強いられた

わたしは、

 

風前の灯火のような 原始的な本能を

 

この絶望の淵から どうやって這い上がるか

という一点に、今、集中せざるを得なくなっている。

 

 

が、それと同時に

 

この最大の悲劇を、客観的視点から

冷酷な目で観察することをしているのもまた、

わたし自身なのである。